(質問)共有物分割請求で代償分割を検討しています。共有不動産の評価はどのように決めますか?
不動産の時価となります。裁判上の不動産鑑定で決めるのが正確ですが費用が相当かさむので当事者間の話し合いで決める事例が多いです。
共有物分割請求で共有不動産の評価を決める場合、不動産の時価で決めることになります。
共有不動産だと共有という制約がかかることから通常の時価よりも安く評価されるのではないかという人もいますが、安く評価されるのは共有持分だけを第三者に売却する場合です。共有持分だけを買い取る第三者からすれば共有持分を買い取ったからといって不動産を自由に使用収益できる状態にはならず制約があるため、通常の時価よりも安く評価されてしまいます。
しかし、共有物分割請求で代償分割を行う場合、代償分割によって買い取る共有者の単独所有となれば使用収益に制約が生じないことになるので共有持分を安く評価する理由がなくなります。
多数の共有者がいる共有不動産で1人の共有者が離脱する場合は代償分割を行っても使用収益に制約は残りますが、共有者の間が公平が保たれることが全面的価格賠償の要件となっているため、共有不動産を時価で評価すべきことになります
では不動産の時価をどのように決めるべきかが問題となります。
共有不動産の時価を決めるのに理論上正しいのは、裁判所が選任する不動産鑑定士の鑑定価格によるものです
ただし、鑑定手続きを行うには相当の費用がかかります。このため裁判所は当事者間で価格の合意を成立させるよう促し、価格の合意が成立すれば、合意した価格によって決めることになります。
価格合意ができればその合意した価格となりますが、合意が成立しない場合は裁判所が選任する不動産鑑定士の鑑定価格によって決めざるを得ません。
共有物分割請求の不動産評価
共有物分割請求において共有不動産を評価する場合、共有持分だけを第三者に売却する場合とは異なり共有者間の公平を保つために時価で評価すべきことは前述しました。
問題はその時価の決め方です。不動産を評価する基準としては、公示価格、路線価、固定資産評価額などがありますが、これによってそのまま不動産の時価は決まりません。
訴訟になった場合、裁判所は裁判所が選任する不動産鑑定士の鑑定額でないと時価と認定しないことになっています。
しかし不動産鑑定には費用がかかります。この費用は鑑定を申請した側が裁判所に予納する形をとるのですが多くの場合訴訟関係者全員が負担することになることから鑑定を行わずに当事者間で不動産評価額の合意を成立させる案件が多いです。私がこれまでに共有物分割請求訴訟で不動産評価が問題となった案件で評価合意が成立せずに裁判所が選任した不動産鑑定士による鑑定が行われたのは約30%です。
裁判所も鑑定には費用がかかるということを理由に当事者間で不動産評価について合意をするよう促すのが通例です。
不動産の評価合意をするための資料となるのが不動産業者の査定書となります。実際に売却を依頼しなくても無料で査定書を作成してもらうことができます。お互いに出した査定書の査定金額の2分の1で合意する例もあります。
ただし、査定書の中には、評価方法に誤りがあるとか裁判上の鑑定をする場合と評価方法が異なっている場合がありますので、その見極めも大事です。
当事者の中には裁判所が選任する不動産鑑定士ではなくて自分で頼んだ不動産鑑定士が作成した鑑定書の価格が時価であると主張する人もいます。
しかし、一方の当事者が頼んだ不動産鑑定士の鑑定書の中には裁判上の鑑定方法を理解しないで作成されている例もあったり、鑑定を頼んだ当事者に有利に働くように偏った鑑定がされる例も多く、信用性に欠けることも多いです。
価格を決める場合に当事者の一方が頼んだ不動産鑑定士による鑑定書が提出されてもこれを鵜呑みにせずに、誤りや偏りを指摘する必要があります。
当事者の中には、不動産鑑定士が鑑定書を作成したのだから裁判所に時価として認定してもらえるのではないかと考える人もおられますが、当事者の一方が頼んだ不動産鑑定士による鑑定書では偏りが生じることが多いことから、裁判所がこれをそのまま時価と認定することはあまずありません。
ですので価格を決める話し合いで一方の当事者が不動産鑑定士に鑑定書を作成してもらうのはあまり意味がないことになります。
ちなみに私がこれまでに取り扱った案件で評価合意が成立せずに裁判所選任による不動産鑑定が行われたのは、当事者間の対立が激しく評価合意を行うことがそもそも困難であった例や、不動産そのものの特殊性が強くまた比較的高額でもあったため鑑定で決着するのが適当と判断された例などがあります。
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