土地の共有名義の解消をする方法
2人以上で土地を所有していることを土地の共有名義といいます
土地を1人で所有している場合は土地に建物を建てるなどの使用、人に貸して賃料収入を得るという収益、担保に入れてお金を借りたり売却したりするという処分が自由にできますが、共有名義になっている場合は自分以外にも権利者がいるために使用収益処分が自由にできないという制約があります。
共有名義だと土地が自由に使用収益処分できないためになんとかこれを解消しようと考えておられる方も多いかと思います。
土地の共有名義を解消するには、
- 土地を物理的に分けて単独所有の土地をつくる方法
- 共有名義を他の共有者に買い取ってもらう方法
- 逆に他の共有者から共有名義を買い取って自分1人の所有にする方法
- 共有名義の土地を一緒に売却する方法
が考えられます。
ところがこのような共有名義の解消をする方法はなかなかうまくいかないことが多いです。
例えば1番の土地を物理的に分ける方法ですが、建物の敷地になっているような場合には適当ではないですし、仮に更地になっていて物理的に分けられるように見えても土地を物理的に分けると面積が少なすぎて土地の価格が下がる場合にも不適当です。一定の面積を確保できる場合でも元々建っている建物の敷地になっていた場合に物理的に分割すると物理的に分けた土地に建物を建てようとすると二重敷地であるとの指摘を受けてトラブルを生じるおそれもあります。このため物理的に2つ以上に分けるのは難しい案件が非常に多いです。
また2番目の他の共有者に共有名義を買い取ってもらう方法ですが、他の共有者がその土地上の建物に住んでいるような場合には適当な方法であるようにも見えます。ところがその共有者にお金がないあるいは払いたくないとの理由で買取を拒まれることも少なくありません。また買取そのものには応じる意向を示してきても低い金額での買取にしか応じる姿勢を見せてこないという問題が生じることもあります
そして3番目の他の共有者から共有名義を買い取って自分1人の所有にする方法ですが、自分から買取を申し入れた場合には値段をふっかけられて高値での買い取りにしか応じてもらえないのではないかとの懸念も生じます
最後の一緒に共有名義の土地を売却する方法ですが、他の共有者がその土地上の建物に住んでいるような場合には売却に応じてもらうこと自体が難しいです。また仮に売却の合意が成立したとしてもどの不動産会社に媒介を依頼するかだとか売出価格をいくらにするかだとか実際に購入希望者が見つかったとしてもその値段での売却に応じるかなどについて争いが生じることも少なくありません
このように土地の共有名義を解消する方法はいろいろありますが、土地の権利をもつ人が2人以上いることからいずれの方法をとろうとしてもスムーズにいかないことが少なくありません。
このような土地の共有名義の解消をスムーズに実現するために民法では土地の共有者全員に共有物分割請求権という権利を認めています
土地の共有名義の解消をスムーズに実現するための共有物分割請求権
土地の共有物分割請求権というのは土地の共有名義をスムースに解消するために民法で土地の共有者全員に認められた権利です。
「分割」という言葉が用いられているため、物理的に分けるというイメージが強くなっています。確かに共有物分割請求権で共有名義を解消する方法は物理的に分けるのが原則とされていますが、実際には前にも述べたように物理的に分けるのが難しい案件が多いことから、共有者の1人に共有名義を買い取ってもらう方法か競売にかけて代金を分け合うという方法のどちらかが行われているのがほとんどです。
共有者のうちの誰かが共有名義を解消するために共有物分割請求権を行使した場合、特別の事情がない限りは共有名義を解消しなければならないものとされています。このため誰かが共有名義を買い取るということがなければ競売を命じる判決を裁判所が下して競売を行って代金を分けることになります
このため、さきほどの2番目のケースのように他の共有者が持分買取に応じなければ、裁判所に共有物分割請求の訴訟を提起して、それでも持分買取に応じない時は裁判所は競売を命じる判決を下すことになります。この競売というのは土地全体の競売になるので放置すると土地所有権をすべて失うことになってしまう訳です。このため土地を失いたくないと考えている共有者に土地買取を応じさせることが可能となります。また値段の争いが生じても少なくとも裁判所が選任した不動産鑑定士の鑑定価格での買取に応じない限りは競売を命じる判決を下すことになるので安く買い取られるおそれはありません
逆に3番目のケースのように自分が単独で所有するために買取を希望する場合でも、裁判所が選任した不動産鑑定士の鑑定価格で強制的に買い取ることが可能になるので他の共有者から値段をふっかけられることを避けることができます
さらに4番目のケースのように値段で争いが生じて売却がうまくいかない場合でも競売を避けようと考えれば共同売却に応じてもらうことが期待できます
このように共有物分割請求によって、強制的に土地の共有名義の解消をすることが可能となります。土地の共有名義の解消にお悩みの方はお気軽にご相談ください
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著者:弁護士・福本 悦朗
東京弁護士会所属・福本法律事務所代表弁護士
共有不動産の持分売却に関して10年以上の実績を持つ。
1992年 早稲田大学卒業
1994年 司法試験合格
1997年 弁護士登録
2001年 福本法律事務所開設