(質問)共有物分割請求の代償分割・全面的価格賠償とは何ですか?
共有者の1人が不動産を取得し、その他の共有者はその見返りに代償金を取得することで共有状態を解消する方法です。
代償分割・全面的価格賠償で他の共有者の持分を強制的に買い取ることができる
代償分割・全面的価格賠償は共有者の1人が不動産を取得し、その他の共有者が見返りに代償金を取得するという共有物分割方法の一種です。
共有解消方法について当事者間の話し合いがつかない場合であっても、全面的価格賠償の要件の主張立証ができれば代償分割・全面的価格賠償を強制的に行うことができます。
よって、代償分割・全面的価格賠償によって他の共有者の持分を強制的に買い取ることができるのです。
他の共有者の持分の強制買取を可能にする全面的価格賠償が認められるためには
全面的価格賠償が認められるためには、1つは持分取得を希望する人が持分を取得するのが相当であることが必要です。
もう1つは持分取得を希望する人に代償金支払能力があると認められることです。
以下で詳しく述べます。
持分取得希望者が持分を取得するのが相当であること
持分取得希望者が持分を取得するのが相当であることが必要です。
持分取得希望者が共有不動産に居住している場合は間違いなく取得が相当と認められます。
逆に持分取得希望者以外の他の共有者が共有不動産に居住していない場合は、居住していない共有者が持分取得相当と認められることはありません。
いずれの共有者も居住していない場合は持分取得相当と認められるかどうかは事案の内容によりけりですが、私自身の印象としては一定の合理性があれば取得相当性が認められる可能性は高いように思います。
持分取得希望者に代償金支払能力があること
持分取得希望者に代償金支払能力があることも必要となります。
代償金の金額は当事者の合意によって決めるのが原則で当事者がの合意ができない場合は裁判所の鑑定によって決めます。詳しくはこちらをご覧ください。
合意ないし裁判所の鑑定によって決まった代償金額について預金の残高証明書などで代償金支払能力の立証を行うのが通常です。
不動産担保ローンで代償金を調達する場合には、金融機関の融資証明書で代償金支払能力の立証を行うことも考えられますが、金融機関によってはこの融資証明書の発行に応じてもらえないところも多いことから注意が必要です。
全面的価格賠償を行うメリット
全面的価格賠償を行うと、競売を命じる判決を求める共有物分割請求訴訟を提起された時に、訴訟提起した人の持分を強制的に買い取って共有不動産が第三者に売却されることを防ぐことができます。
これとは逆に、全面的価格賠償による買取を求める共有物分割請求訴訟を提起して共有不動産を自己の単独所有不動産にすることもできます。
以下で詳しく述べます
競売を命じる判決を求める共有物分割請求訴訟提起された場合に共有不動産を第三者に売却されるのを防ぐことができる
他の共有者が競売を命じる判決を求める共有物分割請求訴訟が提起された場合に訴訟提起された人が不動産を残すために代償分割・全面的価格賠償を主張することができます。
いくら他の共有者が強く競売を求めてきても、全面的価格賠償の主張立証ができれば持分を強制的に買い取ることができるのでこれによって不動産が第三者に売却されるのを防ぐことができるのです。
このように全面的価格賠償は競売を命じる判決を求める共有物分割請求訴訟を提起された時に不動産が第三者に売却されるのを防ぐのに役立つことができます
共有不動産を自己の単独所有不動産にすることができる
逆に、共有不動産を自己の単独所有不動産にするために他の共有者に対して持分を売却するよう持ちかけても話し合いに応じてもらえないこともあります。
そのような場合でも全面的価格賠償の要件の主張立証ができれば他の共有者の持分を強制的に買い取ることができるので、自己の単独所有不動産にすることができます。
このように全面的価格賠償は共有不動産を積極的に自己の単独所有不動産にするために役立つことができます。
共有物分割請求についてよくされる質問を記載します。
- 他の共有者に持分を買い取るよう請求できませんか?
- 不動産に抵当権が設定されていても共有物分割請求できますか?
- 共有不動産に他の共有者が居住していても共有物分割請求できますか?
- 競売手続きをとると不動産が安く売却されませんか?
- 土地だけが共有で建物は他の共有者が単独で所有して他の共有者が居住している場合でも共有物分割請求できますか?
- 競売手続きをとっている共有不動産に共有者が居住していても不動産は安く売却されませんか?
- 共有状態が解消されるまでにどれくらいの期間がかかりますか?
- 共有物分割請求の競売手続きに共有者が参加して不動産を買い取ることができますか?
- 早く共有持分の代金を得たいのですが何かよい方法はありませんか?
- 死亡した人の法定相続人ですが、遺言もなく遺産分割協議も成立していない状態で共有物分割請求できますか?
- 共有物分割請求が権利濫用になりませんか?
共有物分割請求の代償分割・全面的価格賠償の関連ページ
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著者:弁護士・福本 悦朗
東京弁護士会所属・福本法律事務所代表弁護士
共有不動産の持分売却に関して10年以上の実績を持つ。
1992年 早稲田大学卒業
1994年 司法試験合格
1997年 弁護士登録
2001年 福本法律事務所開設