(質問)死亡した人の法定相続人ですが、遺言もなく遺産分割協議も成立していない遺産共有の状態で共有物分割請求できますか?


(解説)

不動産を持っていた人が死亡し法定相続人が2人以上いる場合で、遺言書が作成されていなくて、遺産分割協議も成立していない場合、不動産を2人以上で共有していることになりますが、この場合の共有を遺産共有といいます。

このように遺産分割協議が成立していない状態で法定相続人で共有する遺産共有の場合は、通常の共有とは異なり原則として共有物分割請求はできません。法定相続分の割合で遺産共有しているものの、実際には特別受益や寄与分の問題を検討して具体的な相続分を遺産分割協議を決めるものとなっているのに、そういった遺産分割協議をせずに共有物分割請求で共有状態の解消をするのは適当ではないからです。

相談者の中には相続登記をすれば共有物分割請求ができるのではないかと考える方もおられます。

相続登記といっても、遺産分割協議書で共有取得する旨を定めて行う場合は、遺産共有ではないふつうの共有ですので共有物分割請求はできます。しかし、相続登記といってもこのように遺産分割協議に基づいて行う場合だけでなく、遺産分割協議が成立していなくても法定相続分の割合に応じた登記ができるものとされています。このように遺産分割協議が成立していなくて法定相続分の割合に応じて行われた相続登記の場合は遺産共有で行われていますので、原則として共有物分割請求をすることができません。

普通の共有状態で共有者の1人が死亡して死亡した共有者の持分が遺産共有になった時は共有物分割請求ができる

例えば、兄弟で2分の1ずつの割合で不動産を共有していたとします。この時に兄が死亡して兄の妻と子供が法定相続人になっていてまだ遺産分割協議が成立していないとします。この場合兄の2分の1の持分について妻と子で遺産共有となっています。

この場合は、共有物分割請求ができると解釈されています。これは弟だけでなく兄の妻や子供もできると解釈されています。その理由は、元々兄弟間でふつうの共有であったので、兄弟が共有していたときには共有物分割請求ができた状態であったのです。兄が死亡したことによって兄の持分について遺産共有となったものの、不動産全体でみると元々共有物分割請求が可能なふつうの共有状態であったので共有物分割請求ができることになります。遺産共有と普通の共有が併存した場合に共有物分割請求ができる判断した平成25年11月29日の最高裁判例があります。

遺言書で特定の不動産について法定相続分の具体的な数値で相続させると定めた場合も共有物分割請求ができる

遺言書で相続人に法定相続分の割合の数値で不動産を取得させるという遺言書が作成されている場合も結構あります

法定相続分どおりに取得さぜるという遺言書を作っても意味がないのではないかと思われる方もおられると思いますが、そうではありません

この場合は遺言書で遺産を確定的に取得したことになるので、遺産分割協議が未了という状態ではないことから共有物分割請求ができます

それだけではなく、家庭裁判所で遺産分割の調停や審判が行われる場合は特別受益や寄与分を考慮して遺産の配分を決めることになりますが、遺言書がある場合は遺言者が諸般の事情を考慮して配分を決めたものと解釈されるので特別受益や寄与分の問題は起きません。最低限の取り分の遺留分が確保されない場合に遺留分の請求ができるだけとなります。

まとめ

不動産の所有者が死亡した人の1人のみで、遺言がなく、遺産分割協議も成立していない場合は遺産分割協議を先行させるべきという理由で共有物分割請求ができないことになります。

それ以外の、遺産分割協議がすでに成立している場合、共有持分が遺産となっていた場合、特定の不動産について相続させる内容の遺言書が作成されていた場合は共有物分割請求は可能です

この見極めはなかなかややこしいところであり、例えば遺産共有が遺産となっている場合で特別受益や寄与分の問題が全くないのに漫然と遺産分割調停を行っているという誤った進め方がされていることもあります。

当職が受けた相談の中にも、純粋な遺産共有の問題で、共有物分割請求ができずに最初に遺産分割調停をせざるを得ない案件もあります。しかし遺産分割調停を行わざるを得ない場合であっても、共有物分割請求と同様の方法で共有状態の解消を図ることができますのでお悩みの方はお気軽にご相談ください。

共有物分割請求についてよくされる質問を記載します。


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