(質問)名義貸しローンで共有不動産を取得しましたが、この共有状態と名義貸しローンを解消できませんか?


(解説)

住宅の購入を希望する親族から、住宅ローンの審査が通らないので代わりに住宅ローンを組んで欲しい、住宅ローン債務はこちらが支払うからと頼まれて、ローンを組み、ローンの審査を通すために共有名義の共有不動産を取得した形になっている方もおられます。

名義貸しを頼んだ人が約束どおり住宅ローンの支払いを続けていればよいのですが、途中で支払いが滞ると、名義貸しローンを組んでいる人が法律上の債務者となるため、金融機関から取り立てをされることがあります。支払いを延滞したままだと信用情報機関に登録されるという不利益を受けるために名義貸しローンを組んだ人が名義を借りた人との約束とは異なり支払いをせざるを得ない場合もあります

また支払いを延滞するという問題が起きなかったとしても、法律上は住宅ローン債務を負担している状態には違いがないので、いざ自分の家を購入するために住宅ローンを申し込んでも名義貸しローンがあるために住宅ローンの審査が通らないという問題も生じます。

このように名義貸しローンにはローンの支払いを延滞した場合の問題や延滞がなくても住宅ローン債務を負担していることから新たな住宅ローンを組むのが困難になるという問題を生じることから、名義貸しローンの解消を希望する方もおられると思います。

名義貸しローンで共有不動産を購入した場合に、共有状態を名義貸しローンを解消するのによい方法があります。それが共有物分割請求です。

共有物分割請求権は、共有状態の解消を求める人がいる場合に強制的に共有状態を解消を実現させる権利です

名義貸しローンで共有不動産を取得した場合に、共有物分割請求を行うと、実際にこの住宅に居住している共有者からすれば買取に応じなければ競売によって清算することを余儀なくされます。競売がされれば競売代金で名義貸しの住宅ローンが完済されるので共有名義の共有不動産と名義貸しローンが解消されることになります。

相手が当方の持分を買い取った場合は受領した売買代金で名義貸しの住宅ローンを完済することになるので、共有名義の共有不動産と名義貸しの住宅ローンが解消されることになります。

共有物分割請求権についての詳しい解説はこちらをご覧ください。

名義貸しローンで共有不動産を購入した場合に、共有状態と名義貸しローンを解消するために共有物分割請求をすると、名義を借りているその他の共有者から住宅ローンを立て替えて支払ったのだから立替金を返して欲しいと請求してくる人もいます。

しかし名義貸しを行っている場合、名義を貸している人は通常その住宅には居住していません。本来であれば名義を借りて住居に居住する共有者が名義を貸してくれた共有者に賃料相当額を支払うべきところですが、名義貸しローン債務を実質的に負担することによって賃料相当額の支払いもされているとみるのが合理的であるようにみえます。そのように解釈すれば立替金請求は成立しないものと考えられます。

また名義貸しで共有不動産を購入した場合に、名義を貸した人には実質的な所有権がないとして争ってくる人もいます。

このような名義貸しローンが行われた場合に所有権が名義人にあるか、ローン支払者にあるかが争われた東京地方裁判所平成28年5月19日の判決では以下のような判断がされています。

「名義を借用して不動産を購入した場合は,不動産の所有権は名義人と名義借主との間の合意で所有権の帰属が定まるものと解するのが相当であり,名義人と名義借人との間の合意において,不動産が名義借人に帰属することが合意されていれば,その合意に基づき,名義借人の所有とすることになる。名義貸しであることを理由に名義借主が直ちに所有者となるものではない。一般に名義借人が購入代金及び諸費用を全額負担する場合においては,特段の事情がない限り,上記合意があったことが推認される。しかしながら,購入代金を名義人が借入金で調達し,その返済を名義人がしている場合においては,直ちに不動産の所有権を名義借主に移転する意思があったと推認することはできない。借入金の返済債務を名義人が負担している以上,返済が滞った場合において,当該不動産を処分するなどして,借入金の返済に充てる必要があり,少なくとも借入金の返済がされるまでは,当該不動産の所有権を名義人に留保しておく利益がある解されるからである。上記の利益を放棄したと認められる事情がないときは,当該不動産の所有権は名義人にあると解するのが相当である。」

つまり名義借りをしている人がローンを支払う約束をしていたとしても、返済が滞った場合にローンの支払義務を負うのは名義貸しをした人であることから、ローンの支払が終わるまでは名義貸しをした人に所有権があると解釈すべきものとしています。名義貸しの実態に合った判断だり妥当と考えます。

以上のように、名義貸しローンで購入した共有不動産と名義貸しローンの解消には難しい問題もありますが、共有物分割請求によって解消可能ですのでお悩みの方は弁護士福本までお気軽にご相談ください。

【名義貸しローンによって購入した共有名義の共有不動産の解決事例】
共有物分割請求によって名義貸しローンを解消した事例
共有物分割請求訴訟で持分を他の共有者に買い取らせ、その代金で名義貸しローンを解消した事例

著者:弁護士・福本 悦朗
東京弁護士会所属・福本法律事務所代表弁護士
共有不動産の持分売却に関して10年以上の実績を持つ。
1992年 早稲田大学卒業
1994年 司法試験合格
1997年 弁護士登録
2001年 福本法律事務所開設


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著者:弁護士・福本 悦朗
東京弁護士会所属・福本法律事務所代表弁護士
共有不動産の持分売却に関して10年以上の実績を持つ。
1992年 早稲田大学卒業
1994年 司法試験合格
1997年 弁護士登録
2001年 福本法律事務所開設

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