全面的価格賠償において、抵当権付債務額を控除すべきでないとする当方の主張を認めた上での代償金の支払いを命じる判決が出た事例
共有不動産 川口市にある分譲マンションの一室 相手方が居住
これは夫婦が結婚当時マンションを共同購入したが、協議離婚をした後も夫がマンションに居住を続けて5年以上経過しても、共有関係も残ったままでした。元妻はマンションの頭金を出しておりこの金額がマンション全体の購入金額の約4分の1であったため、4分の1の共有持分を有していましたが頭金を元夫に返してもらおうとしたところ拒否されました。そこで元夫がマンションに居住を続けていることを理由に賃料粗糖損害金の支払いを求める訴訟を提起していたのですが裁判所から弁護士に相談した方がよいと勧められ、当職に相談し当職が賃料相当損害金の請求と共有物分割請求の依頼を受け訴訟をそのまま引き継ぎました。
賃料相当損害金について主張を整理し、共有物分割請求について訴え変更の手続で追加しました。賃料相当損害金については当方の主張を概ね認めるような進行になったのですが、問題は共有物分割請求で元夫は元妻の持分を取得する全面的価格賠償を求めたことです。全面的価格賠償そのものには争いはなかったのですが、相手方はこの分譲マンションには元夫が債務者となっている抵当権が設定されているので、不動産の価格から債務額を控除してこの4分の1相当額を代償金として支払う旨を主張しました。当職は元妻が4分の1の持分を持っているのは頭金を負担しこれが購入金額の4分の1相当であったこと、もしこの代償金算出で不動産の価格から抵当債務額を控除して計算をすると、本来元夫が実質的にも負担すべ債務額を元妻においても一部負担させることになってしまい不当であることを訴えました。裁判所は、当方の主張を認め、今回の事例では代償金算出において抵当債務額を控除すべきでないと判断し、これで算出された代償金の支払いを命じる判決が出ました。元夫はこれを争わず判決記載の代償金と賃料相当損害金の支払いを受けることができました。これによって頭金を回収することができました。
代償金算出で抵当債務額を控除すべきか否かは争点となっており、下級審裁判例ではどちらの裁判例もあるのですが、これは抵当債務が実質的にも共有者1名のみが負担すべきものなのか、共有者全体で負担すべきものなのかによって判断が分かれてくるものと思われます。その意味で下級審裁判例は矛盾していないものともいえます。この点を踏まえて実質的な主張をきちんと行ったことがよい結果につながったものと思います。
【他の共有者に交渉で共有持分を買い取らせた解決事例】
・共有不動産を担保にした借入金で持分を時価で買い取ってもらった事例
・高齢の母親が居住する共有の分譲マンションで母親に持分を買い取ってもらった事例
・他の共有者に持分を売却した事例
・買値の3倍以上の値段で共有持分売却に成功した事例
・親子で共有の二世帯住宅で、子供に親の持分を買い取ってもらって共有関係を解消した事例
・相続により兄弟で共有している不動産の持分を他の兄弟に売却した事例
・親族間で共有していたアパートの土地建物の持分を他の共有者に買い取らせた事例
・遺言で共有取得した不動産について居住している共有者に時価で持分を買い取らせた事例
・義父所有の土地に義父と建物を共有していた事案で、義父に時価で持分を買い取らせた事例
・離婚した元夫婦の共有不動産が残っていた事案で、元夫に持分を買い取らせて元妻名義の住宅ローンを解消した事例
【他の共有者に訴訟で持分を買い取らせた解決事例】
・遺産分割協議で現金取得を拒絶されたが、共有物分割請求で現金取得できた事例
・複数の共有の賃貸不動産の持分を時価で買い取ってもらい、未分配の賃料を回収した事例
・共有物分割請求によって名義貸しローンを解消した事例
・共有物分割請求訴訟で相手方が依頼者の持分を全面的価格賠償で買い取った事例
・遺産分割審判で共有となった不動産の持分を他の共有者が買い取った事例
・依頼者と相手方と亡母の名義となっている不動産で共有物分割請求によって相手方に持分を買い取ってもらった事例
・全面的価格賠償において、抵当権付債務額を控除すべきでないとする当方の主張を認めた上での代償金の支払いを命じる判決が出た事例
・全面的価格賠償の訴訟上の和解が成立し、持分売却ができた事例
・2軒の共有不動産のうち1軒について他の共有者に売却、もう1軒は共同売却をした事例
・遺言で取得した共有不動産の持分を他の共有者に売却した事例
・3名共有の土地で建物が共有者の1人が単独所有している事案で建物所有している共有者に他2名の共有者が持分を買い取らせた事例
・依頼者が借地権を有する土地上に長男と共有の二世帯住宅を建てた事案で長男に建物の持分と借地権を買い取らせた事例
・共有物分割請求訴訟で持分を他の共有者に買い取らせ、その代金で名義貸しローンを解消した事例
・50万円未満の値段で被告の持分を買い取るとの共有物分割請求訴訟を提起された事案で、約15倍の値段で持分を買い取らせた事例
・現物分割を求める共有物分割請求訴訟を提起された事案で、時価で持分を買い取らせた事例
・叔父と共有していたマンション1棟で賃料の分配もされていなかった事案で、未分配の賃料を回収し依頼者の持分を時価で買い取らせて共有関係を解消した事例
・再開発ビルの大半を占める店舗部分を50名以上で共有していた事案で、共有物分割請求で再開発ビルを管理する共有者に依頼者の持分を時価で買い取らせた事例
・姉名義の建物の敷地を姉妹で共有していた事案で、共有物分割請求で姉に妹の土地の持分を時価で買い取らせた事例
・相続で区分建物を腹違いの姉妹で共有していた事案で、共有物分割請求で腹違いの姉に持分を買い取らせた事例
・他の親族の所有建物の敷地を親族間で土地を共有していた事案で、共有物分割請求訴訟を提起した結果、建物所有者に敷地の持分を買い取らせた事例
・兄弟3人で不動産を共有していた事案で共有物分割請求を行い、他の兄弟に持分を買いとらせる形で共有関係を解消した事例
・他の親族の所有建物の敷地を親族間で土地を共有していた事案で、共有物分割請求訴訟を提起した結果、建物所有者に敷地の持分を買い取らせた事例
著者:弁護士・福本 悦朗
東京弁護士会所属・福本法律事務所代表弁護士
共有不動産の持分売却に関して10年以上の実績を持つ。
1992年 早稲田大学卒業
1994年 司法試験合格
1997年 弁護士登録
2001年 福本法律事務所開設