ここでは、共有状態を解消するのに役立つ共有物分割請求とその手続の流れについて解説します。
共有物分割請求は、共有の解消を求める権利である
共有物分割とは、不動産などの物を2人以上で所有している共有状態を解消することをいいます。民法で「共有者ははいつでも共有の分割を請求できる」と定めていますが、これはいつでも共有の解消を求めることができることを意味します。
共有物分割請求された場合は特別な場合を除いて分割の請求を拒否できない
民法では共有物の分割を「裁判所に請求することができる」と定めています。
請求をされた裁判所は、共有物分割請求の権利行使が権利濫用と認められる場合や共有物分割禁止特約があるなどの特別な場合を除いて、何らかの方法で共有の解消を行うことになります。
よって、共有物分割請求をされた人は特別な場合でない限りは分割の請求そのものを拒否できません。
共有物分割の方法は3つある
共有物分割の方法として
共有物分割請求のメリット
共有物分割請求を行うことのメリットは
共有持分売却を希望する人が共有物分割請求をすると時価で持分を売却できる
共有不動産の売却を希望する人が共有物分割請求権を行使すると、権利濫用と認められるような特別な場合を除いて何らかの方法で共有を解消しなければならなくなります。
現物分割という方法は、建物とその敷地の場合には物理的に分けることができないという理由で行うことができません。
代償分割という形をとれば、売却希望する人と不動産を残したい人の希望を満たすことができますが、代償金を用意できない場合には行うことができません。
この現物分割と代償分割が行えない場合は換価分割を行うしかなくなります。当事者間の和解で不動産を任意売却する方法もありますが、和解ができない場合は競売を命じる判決を取得して代金を分けるしかなくなります。
競売手続をとると不動産が安く売却されると誤解している方も多くおられますが、都市部においては不動産購入希望者が多いことから競売でも時価で売却されるのが殆どです。時価よりも高額で売却されるケースも多数あります。
競売における売却価格についての詳しい解説はこちらをご覧ください。
持分買取を希望する人が共有物分割請求をすると一定の要件を満たせば自己の単独所有不動産にすることができる
共有不動産に居住している人が他の共有者の持分を買い取りたいと希望しても、買取交渉が上手くいかないことがあります。
そのような場合であっても、共有物分割請求権を行使することによって共有不動産を自己の単独所有不動産にすることができます。
但し、買取希望する人が持分を取得することが相当であると認められて、かつ、買取希望する人に代償金支払能力があると認められる場合に限られます。詳しくはこちらをご覧ください。
逆にいえば、その要件を満たすことができれば、他の共有者がいくら持分の売却に応じてもらえない場合でも、強制的に他の共有者の持分を買い取ることができます。
共有物分割請求のデメリット
共有物分割請求を行うことのデメリットは
相手方の対応次第で解決まで1年以上かかることもあること
共有物分割請求を行って、相手方が観念すれば、数ヶ月程度で解決できます。当職もこれまでの経験で2,3ヶ月程度で解決事例も多くあります。
しかし、相手方が直ちに応じずに共有物分割請求訴訟になると、通常は1ヶ月に1回程度の期日が開かれることになり、日数がかかることになります。
また価格についての争いが決着しないと、裁判上の鑑定を行うことになりますが、これだけで通常は3ヶ月程度かかります。
さらに、競売を命じる判決が下されると、競売手続で売却することになりますが、競売申立から代金受領までだいたい8ヶ月程度かかります。
そうすると、訴訟になって競売で売却すると1年以上かかることもあります。
競売を命じる判決を求めても相手方が全面的価格賠償の要件を満たせばそちらが優先されること
売却希望で共有物分割請求訴訟を提起する場合は、競売を命じる判決を求めることになります。
但し、相手方が全面的価格賠償を主張し、この要件を満たせば全面的価格賠償が行われることになり、競売を命じる判決とはなりません。
競売は、現物分割や全面的価格賠償が行われない場合にのみ認められるものだからです。
逆に、買取目的で全面的価格賠償を求める訴訟を提起し、この要件を満たせば必ず全面的価格賠償を命じる判決がくだされることになります
よく、共有物分割請求訴訟では思い通りの判決にならないという記述がされることがありますが、競売を命じる判決を求めても全面的価格賠償にならないという意味ではあっていますが、買取目的で全面的価格賠償を命じる判決を求めた場合には、全面的価格賠償の要件を満たせば、これを命じる判決が下されることになりますのでその点には誤解があるものと思われます。
民法が共有物分割請求権を認めた理由-共有放置による社会経済上の不利益を防止するため
このように共有物分割請求権は強制的に共有を解消する権利であり、共有者が不動産を残したいと希望しても競売を命じる判決によって競売されて不動産を失う可能性もあるので非常に強力な権利です。
民法がこのように非常に強力な権利を認めたことには理由があります。
それは共有状態を放置すると共有者間の争いを生じやすく、社会経済上の不利益が大きいからです。
共有不動産は1人が所有している不動産と違って、自分1人の意思だけで売却や担保借入といった処分行為や、賃貸借に供して賃料収入を得るという行為を行うことができません。
共有者の意見が一致していればよいのですが、意見が一致しない場合には、それだけで争いになるというだけではなく、共有者の一部のみが不動産を残すことに利益が生じている場合には共有者間に不公平感を生じさせますし、不動産の管理修繕も不十分になる場合がよくみられます。共有状態を放置することの社会経済上の不利益が非常に大きいのです。
このため、共有解消を希望する人がいる場合に強制的に共有解消を認める強力な権利を認めたのです。
共有物分割請求の手続の流れ-共有物分割協議、協議不成立の場合は共有物分割請求訴訟
共有物分割請求手続の流れは
共有物分割協議
最初に共有物分割協議の申入を行います。
協議が成立すれば合意書を取り交わして、共有物分割を行います。
協議が成立しない場合は共有物分割請求訴訟を提起します。
共有物分割協議についての詳しい解説はこちらをご覧ください。
共有物分割請求訴訟
共有物分割協議が成立しないときは共有物分割請求訴訟を提起します。
共有物分割請求訴訟は共有者全員を当事者とする必要があるため、共有の争いに関心を持っていない共有者も被告として訴訟提起をする必要があります。
裁判所で和解(代償分割や換価分割が大半ですが競売の和解が成立することもある)が成立することが大半ですが、判決になることもあります。
共有物分割請求訴訟については詳しくはこちらをご覧ください。
共有物分割競売の経験豊富な弁護士による共有不動産の時価売却
共有不動産を時価で売却するには、交渉が成立しなければ共有物分割請求訴訟で競売を命じる判決が下される可能性が高いことをアピールする必要があります。
これに対して、競売なんかしても安く買いたたかれるはずだから競売を求めることなどあり得ないと考えて髙をくくっている人も少なくありません。
しかし、弁護士福本は共有物分割請求に特化して10年以上経過し、これまで共有物分割競売を多数行い、時価売却を実現しています。
このように競売も辞さずとの姿勢で交渉を行い、実際に競売でも時価売却を実現していることから、交渉段階でも時価売却できる可能性が高まります
【他の共有者に交渉で共有持分を買い取らせた解決事例】
・共有不動産を担保にした借入金で持分を時価で買い取ってもらった事例
・高齢の母親が居住する共有の分譲マンションで母親に持分を買い取ってもらった事例
・他の共有者に持分を売却した事例
・買値の3倍以上の値段で共有持分売却に成功した事例
・親子で共有の二世帯住宅で、子供に親の持分を買い取ってもらって共有関係を解消した事例
・相続により兄弟で共有している不動産の持分を他の兄弟に売却した事例
・親族間で共有していたアパートの土地建物の持分を他の共有者に買い取らせた事例
・遺言で共有取得した不動産について居住している共有者に時価で持分を買い取らせた事例
・義父所有の土地に義父と建物を共有していた事案で、義父に時価で持分を買い取らせた事例
・離婚した元夫婦の共有不動産が残っていた事案で、元夫に持分を買い取らせて元妻名義の住宅ローンを解消した事例
【競売で共有不動産を売却した解決事例】
・不動産競売で業者の査定より高額で落札されて共有持分売却ができた事例
・持分担保融資を受けて共有物分割競売手続を行い、業者査定額の約1.4倍という高額で落札されて持分売却できた事例
・兄が居住している共有の土地建物で共有物分割請求訴訟で競売を命じる判決を得て、競売によって時価で売却できた事例
・認知症の相手方が居住する共有の雑居ビルで共有物分割請求訴訟で特別代理人を選任してもらって競売を命じる判決を得て、時価で売却できた事例
・姉妹が共有する土地建物に姉妹が居住していた事例で共有物分割のための競売を行って共有関係を解消した事例
・相続により8名が土地建物を共有していた事例で共有物分割のための競売を行って共有関係を解消した事例
・借地権付テナントビルを兄弟で共有していた事案で競売を行い、時価を超える金額で売却して共有関係を解消した事例
・他の共有者名義の建物の敷地となっている共有土地で共有土地のみの共有物分割競売を行い、時価を超える金額で売却して共有関係を解消した事例
このような弁護士福本が共有物分割請求を行えば、交渉段階で共有不動産の時価売却できる可能性が高くなり、競売をちゅうちょしないので訴訟でも競売でも時価売却を実現することができます。
共有物分割請求の経験豊富な弁護士による共有持分の強制買取
全面的価格賠償という一定の要件を満たせば持分の強制買取が可能であることは述べました。
これは訴訟によって実現することができますが、訴訟まで至らなくてもこの点をアピールすることによって交渉段階でも他の共有者から持分買取をすることができます。
弁護士福本は共有物分割請求に特化して10年以上経過しており、これまで持分の強制買取やこれを踏まえた交渉による持分買取の経験が多数あります。
【交渉で他の共有者から共有持分を買い取った解決事例】
・高齢の依頼者がリバースモーゲージで不動産担保ローンを組んで持分を買い取った事例
・判決で持分強制買取が可能であることを示すことによって、他の共有者からの持分買取に成功した事例
・依頼を受けて約2ヶ月で他の共有者から持分を買い取って単独所有となった事例
・10名以上で共有していた借地権付建物について他の共有者の持分を買い取った事例
・区分建物を兄弟2人で共有していた事案で、居住している共有者が居住していない兄の持分を買い取った事例
・兄弟間の対立で共有不動産の売却ができなかった事案で、妹の持分を買い取った事例
【訴訟の判決で他の共有者から強制的に共有持分を買い取った解決事例】
・昭和60年頃の相続不動産で相続手続をとらずに法定相続人が30名に増えた事案で共有物分割請求訴訟で他の共有者から持分を買い取り単独所有にした事例
・親子でテナントビルを共有していた事案で、共有物分割請求訴訟を提起して金融機関から融資証明書の交付を受けることによって全面的価格賠償を命じる判決を取得し依頼者の単独所有とする形で解決した事例
・自宅を建てる際に親に購入資金の一部を負担してもらい土地建物を共有していた事案で、共有物分割請求訴訟を提起して全面的価格賠償を命じる判決で親の持分を買い取って依頼者の単独所有とする形で解決した事例
このように、持分強制買取の豊富な経験を踏まえて交渉による持分買取が実現する可能性が高くなります
【共有物分割協議の解決事例】
特徴的な解決事例を掲載しています。
【共有物分割請求訴訟の解決事例】
特徴的な解決事例を掲載しています。
著者:弁護士・福本 悦朗
東京弁護士会所属・福本法律事務所代表弁護士
共有不動産の持分売却に関して10年以上の実績を持つ。
1992年 早稲田大学卒業
1994年 司法試験合格
1997年 弁護士登録
2001年 福本法律事務所開設
共有物分割請求のよくあるご質問と関連事項
共有物分割請求についてよくされるご質問を記載します。
- 他の共有者に持分を買い取るよう請求できませんか?
- 不動産に抵当権が設定されていても共有物分割請求できますか?
- 共有不動産に他の共有者が居住していても共有物分割請求できますか?
- 競売手続きをとると不動産が安く売却されませんか?
- 土地だけが共有で建物は他の共有者が単独で所有して他の共有者が居住している場合でも共有物分割請求できますか?
- 競売手続きをとっている共有不動産に共有者が居住していても不動産は安く売却されませんか?
- 共有状態が解消されるまでにどれくらいの期間がかかりますか?
- 共有物分割請求の競売手続きに共有者が参加して不動産を買い取ることができますか?
- 早く共有持分の代金を得たいのですが何かよい方法はありませんか?
- 死亡した人の法定相続人ですが、遺言もなく遺産分割協議も成立していない状態で共有物分割請求できますか?
- 共有物分割請求が権利濫用になりませんか?
共有物分割請求の関連事項